小学生編 第21話 少女の意味とは

鼠色のパーカーに青い七部丈のズボンを履き、死んだような目をした黒髪短髪の少年、本藤和雅は七三分けをきっちりときめた髪型の石川俊道に連れられ、ある場所に来ていた。

それは地球ではない別の星。だが環境はとても地球に近く、大気もあり気温も気候も穏やかだ。

名をピテル星というこの星に二人が降り立つと宇宙船を、大きな縦長の建造物が建ち並ぶ、都市部のような場所にある一際大きな建物の中に入れると、外へと降りた。

そこは異星人用の宇宙船停車場らしく、建物内は空港のようにも感じる内装で、多くの知的生命体の姿があった。

大きなナメクジのような生命体に、全身毛むくじゃらの白い雪男のような生命体。特に多いのは人型ではあるが、身長は小さく頭が大きくて黒い瞳の知的生命体。地球人なら宇宙人といえばこれと言う印象をもった生物だ。

そんな光景を物珍しそうに見る和雅に、俊道は笑顔で指摘する。

「和雅君。あんまりジロジロ見ると失礼だよ。」

「あっ、すみません。」

「ここの星の人達は、地球では“グレイ”とも呼ばれ、目撃されるくらいに我々と交流のある宇宙人でね。地球人とも共通点の多い生物なんだよ。」

「確かに僕も、テレビとかで見たことあります。」

「そうだろう?そろそろ仕事の話をする事になるから説明しておくと、ここの星の住人は言語ではなく、思念で意思疎通を測るから、話しかけられたら心の中で返事をするんだよ?」

「思念って、テレパシーの事ですねよね?」

「その通りだよ。さぁ、先方さんがお待ちの部屋まで行こうか。」

そう言うと俊道は、エレベーターのような扉の前で立ち止まる。

エレベーターといえば、地球でよく見るような行き先ボタンが箱の内側についている物だが、この扉には外側に多くのボタンのような凹凸が付いていた。

その凹凸には文字も無く、印も数字もない無模様だったが、俊道はそれにさっと手をかざすと自動的に一つのボタンが点灯し、すぐに扉が開いた。

どうやら奥はエレベーターの箱ではなく、直接目的の部屋に繋がったようだ。

本藤和雅はこの扉に興味を示して、よく観察しようとしたが、俊道に中に入るよう言われたため諦めた。

部屋に入ると、奥の机と椅子に腰掛ける。黒い瞳に背が低く頭が大きな宇宙人が、こちらに視線を向けてきた。

彼は無言で立ち上がり、手前にある客用のソファとテーブルの場所を手で指すような手振りをした。

それを受けて俊道が、一礼して腰掛けたのを見て、和雅も同じように座った。するとテーブルの中央から丸い球体のような白い機器が出現し、眩しくない程度に光出すと、そこから日本語でこんな声が聞こえる。

『よくお越しくださいました。情報局副局務長、石川俊道様。ご存知かとは思いますが、我々は言語を持ちませんので、このような形で対話させていただきます。』

そんな音声が発せられた後、頭が大きく黒い瞳の背の小さな宇宙人が、対面するように席に座る。

副局務長 石川俊道は白い球体の機器を物珍しそうに見るとこう言った。

「ほう。これは始めてみる機器ですね?」

『これは思念伝達の力をこの機械に一時的に移しいれて、対話をする人物の言語に自動で変換させるものでして、』

「移しいれる機械!?」

そう大きく反応したのは本藤和雅だ。少年はテーブルに手を付き、好奇心旺盛な表情で機器を見つめる。

頭の大きな宇宙人は少年の反応に少し驚くと、顔を俊道へ向けこう問うた。

『彼は?』

「失礼。彼は僕の助手として連れて参りました。和雅君?挨拶を。」

「あっはい。本藤和雅です。」

『私も自己紹介がまだでしたね。この惑星の依頼人代表として選抜されました。クレル・レールと申します。以後お見知りおきを。』

クレルがそう言い、和雅に向けて握手を求めるように手を突き出した。地球人の大人と比べても一回り大きいその手に、少年は戸惑いながら握手を交わすと、七三分けの青年。俊道がこう補足した。

「彼も科学者でありまして、この球体の技術と似たような研究をしております。なので興味が湧いたのでしょう。」

『そうでしたか。こんな物でお役に立つのでしたら、設計図と技術を詳細に書いたものをお渡ししますよ。』

「本当ですか!?」

頭の大きな宇宙人、クレルの言葉に和雅はキラキラした瞳でそう反応した。普段死んだような目の少年も、好きな事になると目を輝かせる。

そんな彼とは対照的に、俊道は申し訳なさそうに言う。

「良いのですか?」

『ええ、構いませんよ。では本題に入らせていただきますね。今回の依頼なのですが現在、壁に隔離している。あるウイルスに感染した星の動物達を葬って頂きたいのです。』

それを聞いて俊道は一度考える素振りを見せた後、こう問うた。

「事前に内容を伺っておりましたが、いくつかお聞きしたいことがあります。失礼ながらその程度の事でしたら、そちらでどうにか出来たのではありませんか?どうしてご依頼を?」

『はい。実は既にあらゆる攻撃兵器を試しましたが、効果がなかったのです。』

「何故でしょう?」

『主な原因はウイルスの影響だと我々は考えておりますが、彼らは攻撃し絶命させても、その驚異的な再生能力で、すぐに復活してしまうのです。』

「なんと・・・。」

『ですので、これ以上の感染を防ぐために、隔離する事くらいしか出来ませんでした。』

「そのウイルスについては、どこまでご理解しているのでしょうか?」

『先ほど申し上げた以上の事は、殆ど掴んでおりません。なので今回、科学者としてその実力に信頼のおける情報局 副局務長石川俊道様に依頼する運びとなりました。』

「なるほど・・・理解いたしました。では早速、調査してみたいと思いますので、問題の場所まで案内していただけますか?」

その会話が終わると俊道と和雅は、クレル・レールに案内され、分厚い鉄の壁で囲まれた星の一角まで到着した。

安全の為、フルフェイスヘルメットのようなガスマスクを装着し、二人は壁の中へと入る。ガスマスクに内蔵されている無線機能を使い、石川俊道が和雅少年に話しかける。

『和雅君。ここからは危険だから油断しないようにね。少しでも命の危機だと判断したら、無理をせず逃げるんだよ?』

『分かりました。』

『おっと、早速お出ましのようだね。』

そう上空を見上げながら言う俊道の視線の先を和雅が追うと、そこには空を飛ぶ見るも無残な鳥達の姿があった。肉体は千切れていたり、腐っていたりと、殆ど骨が空を飛んでいるのではないかと思うくらいの固体まである。

死体のような彼らは、こちらを見るなり、猛烈な勢いで突進してくる。

集団で迷い無く向かってくる謎のウイルスに感染した動物達を見て、本藤和雅は後ずさりして焦りを見せたが、俊道は冷静に言葉を続ける。

『さて本番だ。和雅君よく見ておくんだよ。』

『はい!』

彼の言葉を受け、やっと副局務長の実力を拝む事ができると、好奇心が和雅の胸を高鳴らせる。

突撃してくる鳥達が、二人にすれすれまで接近したその時、石川俊道の超能力が発動する。すると次の瞬間、動物達は一斉に一点に集まり、身体を細かくいくつにも切断され、次々に地面に落ちていった。

何が起こったのか分からない和雅は、驚いた表情を浮かべて副局務長 石川俊道を見る。

自分に送られた視線に俊道が気がつくと、聞かなくても分かる少年の疑問に答えた。

『今のは特に何も工夫していないよ。ただ、一点に瞬間移動させただけさ。和雅君、瞬間移動の原理はわかっているよね?簡単に説明してごらん。』

『えっ、あっはい。今いるA地点と移動したいB地点を能力的に繋ぎ合せ、自分をB地点の物質として選択する事で空間を元に戻した時、B地点に出現する事が出来る空間能力ですよね?』

『その通り。では、その物質選択の際に、半分しか身体を移動させなければどうなるかな?』

『・・・空間が元に戻る力に引っ張られ身体が引き裂かれます。』

『そう、その現象が起きただけさ。問題はここから、情報が正しければ奴らには驚異的な再生能力がある。すぐに元に戻る筈だよ。』

俊道はそう言うと、落ちて身体が切断された鳥達の姿を観察する。

彼らは身体の無い部分が内側から生えるようにして、少しずつその姿を取り戻しつつあった。見かねた七三分けの青年。俊道はもう一度能力を発動し、そのバラバラになった死体を空中に集めた。

その様子を本藤和雅が固唾を飲んで見守っていると、集まった死骸の中心から大きな爆発が起きる。

爆発のエネルギーで再生しつつあった動物達の身体は跡形もなく消え去り、和雅は起きた事を見て驚きを表情に表すとこう質問する。

『あれは中心に爆弾でも一緒に移動させたのですか?』

『その通り、よくわかったね!しかし、それだけじゃないよ。実は今起きた一連の出来事には、他にも科学のサポートを受けている。わかるかな?』

『・・・わかりません。』

『答えはね。これだよ。』

そう言って俊道は、左耳に付けていた小型の補聴器のような機械をとって見せた。

『これは超能力で起こしたい現象を、脳からの信号を受けて自動的に補助処理して、より脳に負担無く現象を引き起こす為に開発したコンピューターでね。これを利用すれば頭の中で超能力を発動するときに必要なイメージや、計算を大きく短縮する事ができる。』

『すっ、すごい。そんなものが!!』

『君が開発中の物に、方向性は似ているだろう?』

『だけど石川さん。あの爆発を起こした爆弾はどこから?』

『白衣の裏から超小型のものを瞬間移動させたんだよ。僕は常にある程度そう言うものを持ち歩いているんだ。もし火力が足りない場合は、例えば酸素を爆発地点に集めて威力を上げたりとかの工夫もできるよ?』

『なるほど・・・。』

俊道の戦い方は物凄く勉強になる。

科学の知識が無ければ応用できない事を初め、超能力に相性の良い武器、そして何より驚くべきなのは、彼の緻密な能力操作だ。超能力をサポートするという機器があるとは言っても、ここまでの事を平然とやってのけるには、相当の技術訓練が必要だ。

同じ超能力者である和雅には分かる。これまで俊道が超能力で起した一連の現象がどれだけ高等なのかを、石川俊道が何故副局務長なのか理解できた気がする。

そうこうしている内に、爆発の中心。空中で何かが集まり出している事に二人が気が付いた。異質な光景に俊道がこう声を漏らす。

『あれが再生途中ならば、これは確かにここの星の住人も手を焼くと言うものだ。』

『でも、あれは本当にウイルスに感染したから起きている現象なのでしょうか?なんだかそれこそ、異能的な力が関っているとしか思えないような、超自然現象ですよね?』

『うーむ。』

和雅少年の言葉を受けた七三分けの俊道は、腕を組んで考える。

そして何かを思いついた彼は、付けていた腕時計の端に付いているボタンを押し、目の前に光だけで構成された半透明の画面を空中に出現させ、そこに出ている数値を見始めた。

『これは・・・。』

そんな風に呟き、画面を閉じると俊道は和雅に向けてこう言った。

『和雅君!僕の手につかまって!』

『あ、はい。』

本藤和雅は戸惑いながらも、差し伸べられた手につかまった。すると俊道は能力を発動し、一瞬でその場を移動した。

つい目を瞑ってしまった和雅が移動した場所に目をやると、目の前に細長いラグビーボールのような鉄の塊があるのに気が付いた。

副局務長、石川俊道はそれに近づくと躊躇無く触り、調べ始める。

そして何かを確信したような表情を見せた彼は、外側に付いていた読めない文字が表示される機器に手を触れ、先ほどと同じように半透明の画面を出現させて操作すると、手の触れている文字が反応し、割れるような音と共に鉄の塊が中心から開き出し、水蒸気とぬめりけのある気持ちの悪い液体と共に何かが出て来た。

それはまだ小さく幼い一人の女の子だった。

次話

情報局、地球一般には隠れた超能力者が束ねる組織で、その存在は世間には公にされていない。 そんな組織の本部は、意外とよくみえる場所にある...
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク