小学生編 第11話 無垢な恋心

夜の東京、六本木ヒルズにあるガラスの多い大きなビルの屋上で、一人の男の子が身を潜めながら、向かい側にあるビルの様子を、手に持つ単眼鏡のような黒い機械で監視していた。

彼の名は本藤和雅。鼠色のパーカーに青い七部丈のズボンを履き、生気のない死んだような目をした黒髪短髪の少年だ。

和雅の持つ黒い機器は、所属している組織『情報局』の物で、地球とは差のある高度な宇宙科学技術によって作られ、これ一つで月の地表まで見れてしまうほどの性能を持つ。

彼は現在、上司である上級情報員、白石美咲率いる新作戦チーム。坂井準、大心龍介の二人を連れ、計四人で与えられた仕事の最中だった。請け負った仕事を真面目にこなして居る和雅は、耳につけていた小型の無線機から、リーダー美咲から音声が響くのに気が付いた。

『かずくん、そちらの様子はどう?』

「今のところ、ビルからは誰も出てきてませんよ。美咲さん。」

『了解。じゅんくん?目標に動きはあった?』

そう美咲の音声が和雅の耳に届くと、返事をする坂井準の声が聞こえる。

『目標は今、トイレから出てきました。恐らくもうすぐエレベーターの方に向かうと・・・。あっ、“例のスーツケース”を持って男が動き出しました!』

『わかったわ。かずくん?男がビルから出たら合図して、りゅうくんと一緒に作戦行動に移るから。』

「了解。」

通信が終わると、和雅は持っている短眼鏡のような機械から見える、黒いスーツを着た男の行動に視線を合わせながら、仕事内容を再確認するように少し前の出来事を思い出す。

和雅達は茶髪のショートカットに可愛い動物の絵の入ったTシャツにミニスカート、ニーソックスによく手入れのされているローファーを履いた少女。白石美咲との初対面を終えた後、間もなくして情報局の仕事を任される事となった。

内容はとある会社の研究員が、秘密裏に運ぼうとしている情報の抹消だ。

その情報とは、情報局のどこからか漏れてしまった『超能力者』に関する研究データ、本来は厳重に移動、保管、保存されている情報局の情報も、こうして稀に何かの拍子で流出する事がある。だが漏れた情報は情報局にとっては古く、不正確なデータなのだが組織自体が秘密主義のため、些細な事でも念を入れているのだ。

長めの薄く茶色の髪にグレーのTシャツ、シーパンを履き、優しそうな見た目少年、大心龍介は仕事の経験があるため、美咲と先頭に立って直接的な仕事の実行役を担い、準と和雅は初経験になるので、仕事を遠目で見て参考にしろと言う主旨の元、見張り、サポート役として進める方針だそうだ。

和雅少年が少し退屈そうに監視を続けていると、ビルの入り口付近に目標の人物が、漏れた情報の入ったスーツケースを引きながら出てくるのが見えた。メガネをはめ、天然のパーマの掛かった黒髪が特徴的な、よく研究者に居そうなその男は、周りを確認しながら慎重に移動しているようだった。

「出て来た。」

和雅が耳につけている小型無線機に手を触れてそう声を発すると、実行役の二人が同時に目標の男に襲いかかり、白石美咲が手を触れると彼はすぐ力なく倒れ込んだ。

その間に龍介がスーツケースを奪って走り出し、気絶した男に美咲が注射器を刺して何かの薬を投与していたが、あれは恐らく坂井準が学校に登校中、自分の超能力が露見した時に使っていた白いビー玉のような煙玉に似た、記憶を消す効果のある薬でも打ったのだろう。

現場から二人が離れたのを確認してから、和雅のその場を後にした。

仕事を終えた作戦チームの4人は、当初決めていた集合場所の公園で集まり、美咲がスーツケースの中にあったフロッピーディスクをパソコンに入れ、データを確認していた。

一週間用の大き目のスーツケースにも関らず、中身はスポンジが詰めてあるだけで、そのディスク一枚のみしか入っていなかった。しばらく無言でパソコンを打っていた茶髪少女が、キーボードを打つ手を止めて額の汗を拭うと、こう言った。

「うん、中身は本物で間違いないわね。かずくんとじゅんくん?今日は初めての仕事だったけど、どうだった?」

「大体どんな感じかはわかりました!」

元気よくそう答えたのは、上が白、下が黒の半袖半ズボンで坊主頭。麦藁帽と虫かごを装備して、よく虫取りに行っていそうな印象を持った少年。坂井準だ。

彼に続き、和雅も無言で頷く。

「今回は見ているだけだったけど、次からは参加してもらう事になるから、しっかりと心構えもしておいてね。」

「「はーい。」」

作業の終わったパソコンを、3人が話しをしている間に片付けていた大心龍介は、美咲にパソコンの入った鞄を渡しながら言う。

「仕事は無事終わりましたし、支部に戻って報告しますか?美咲さん。」

「ありがとうりゅうくん!そうしましょう。」

「はい。」

そんな龍介と美咲の会話の中から、何かを読み取った坊主頭の準は、こっそりと和雅に耳打ちする。

「ねぇかず?龍介くん怪しくない?」

言葉を受けた和雅は、準が何を怪しいと思っているのか分かっていた。と言うよりも同じ事を考えていたと言うほうが正解なんだろうが、彼は意外に顔に出て分かりやすい。

美咲と話している時の龍介は、頬を赤く染め、声もトーンが高いし、緊張しているようにも見える。

そんな現状を再確認した和雅少年は、核心をつくように耳打ちでこう返した。

「そりゃ、あれだろ?恋だろ?」

「あっ、やっぱり?」

そんな会話を終えた少年達は、ニヤニヤとした表情で龍介を見詰め、視線に気付いた大心龍介は驚いた表情と疑問を浮かべながら二人に問うた。

「どうしたの?」

「「別にー!」」

「?」

優しそうな見た目の少年、龍介は和雅と準の考えている事が分かっていないままだったが、その後すぐに美咲に先導され、情報局の支部へと報告に向かうことになった。

次話

地球の九州上空。ここにはステルス機能を使い、地上の人間に認識できないようにして浮かんでいる一つの宇宙船がある。 ステルス機能とは、視覚...
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