小学生編 第29話 向かう戦場

技遊帝国と情報局、花の総合病院を始め、その他の局と関係の深い周辺の星々を巻き込んだ戦争が宇宙で始まってから、一週間がたった。

戦いは本格的に激しくなり、地球から少しはなれた技遊帝国の領星との中心に位置する宇宙空間では、宇宙船同士での打ち合いが行われており、情報局側は早くも千人以上の戦死者を出している。しかし戦況は一方的かと思われていたが、既に100億近い兵の被害を出している技遊帝国が若干押されていると言う状態にあった。

勝因は超能力者達の戦闘能力の高さと、攻撃兵器技術力の差だ。

情報局は天の川銀河の中でもトップクラスの科学技術を持ち、特に超能力関連の技術は宇宙一、超能力者は一万の兵を簡単に相手にし、彼らの宇宙船から放たれる砲撃は、無数の宇宙船を一瞬のうちに消し飛ばし、本部『月』のある太陽系から発射された星ほどの巨大な砲弾が幾度と無く帝国の領星に接近してきた。

流石にこれには兵力的戦力差に余裕はある技遊帝国側でも、明らかな焦りを見せていた。

幾ら兵士がいると行っても、宇宙での戦争は攻撃兵器の技術力が勝負となる部分が大きい。技術で技遊帝国が負けていると言うのが明確になった今、帝国の頂点に立つ長い白髪と白髭の煌びやかな衣装を身に纏う国王は一人、玉座で悠々と座りながらも額に汗を流してした。

生気のない目の少年、本藤和雅は学年が上がり、6年生となった。

そして今日、和雅はいよいよ戦場に出ることが決まった。黒い全身タイツに黒いジャケットの防護服を身に纏い、上級情報員 白石美咲を先頭に本藤和雅、坂井準、大心龍介が後ろで横並びに整列していた。

正面には局務長大心真が鋭い眼光と、真剣な面持ちで立ち、大きな声で言い放った。

「いいかお前達、今から向かうのは訓練では無い!本物の戦争だ。なんでもあり、ルールの無い殺し合いだ。」

この言葉に4人の少年少女がゴクリと息を飲む。

茶髪ショートカットの少女、白石美咲は特に激しく緊張し、息は荒く今にも過呼吸になり倒れてしまいそうな程だった。リーダーとしての責任と、少年達の命を預かる重大さ、戦争、死への恐怖、彼女が感じている精神的重圧は今年中学生に上がったばかりの少女には、余りにも重いものだった。

そんな美咲に対して心配した様子も見せることなく局務長は辛辣に、はっきりと言う。

「これからお前達には敵の領星である一つの星に行き、敵基地を襲撃してもらう。作戦の詳細はお前達に渡した端末の中に入っている。その指示に従って適切に敵殲滅を行え!」

「「「はい!」」」

こうしてまだ若い命が、戦場の最前線へと駆り出される。

美咲、和雅、準、龍介は一人ずつ円盤型の宇宙船に乗り込み、淡々と席に座ると、戦闘前の準備を各々始めたが、無線通信越しに今まで開かなかった口を坊主頭の少年、坂井準が開いた。

「みんな平気?・・・・・・・・僕は正直、怖いよ。」

その通信に、他3人の手が止まる。

準の気持ちは痛いほどわかる。いや、今まさに全員が同じ気持ちを抱いている事だろう。

生きるか死ぬかの本当の戦争、怖くない人間なんていない。

返事が帰ってこない事で皆の気持ちを感じ取った準は、暗い顔で俯いた。すると、少年の声が無線から伝わる。

『怖くないなんて嘘は言えない。だけど、俺は地球を守りたいし家族を守りたい。だから力がある俺らが行かなきゃならない。じゃなきゃ全て失ってしまう。でも俺は、同じくらいお前達を失うのが怖い。だから、俺が絶対守ってやる。』

無線に声を通したのは本藤和雅だった。言葉に準は顔を上げ、龍介はやさしげな表情で微笑み、美咲は張り詰めた呼吸を止めて、肺に溜まった息を吐き出し、そしてこう言った。

『なに言っているのよ。かずくんにだけ背負わせたりしないわ。皆が、皆を守り合うのよ!』

美咲がそう言うと、続けて龍介も声を上げる。

『乗り越えよう。僕達なら生きて帰れるよ!』

『おう!』

『うん!』

『そうね!』

気合いを入れ直して少年少女は宇宙へと飛び上がる。自動運転で飛ぶ円盤型の宇宙船は、彼らを乗せて本部『月』を抜けると、光の速さで発進した。

それぞれが今回の作戦内容を再確認しながら、目的の星へ向かう。

船が目的地に到着するまで約30分以上の時間が経っているが、和雅達にはまるで時間を感じていないと錯覚するほど早く到達したように思えた。

星の前では、既に十数台の敵宇宙船が飛び交っていた。両者がお互いの存在を確認するとすぐに戦闘が始まる。

人工知能による宇宙船同士の撃ち合いだ。

宇宙に搭載されているのは追跡ミサイルや熱光線銃などが主流で、開戦と同時にそれらが激しく横行する。しかし、やはりというべきか、情報局の宇宙船や人工知能の方が優秀で、和雅、美咲、準、龍介を乗せた、たった4台の宇宙船が技遊帝国軍の宇宙船を次々と撃ち落としていく。

圧倒的とも思える性能の違いに、和雅は希望を見ていた。

(いけるんじゃないか!?これなら俺たちだけで全滅もありえるかも知れない!!)

少年のそんな思いは、ある意味悪いフラグだったのかもしれない。

『きゃああ!!!』

悲鳴のような音声が宇宙船内に響く、和雅にはその声の主が確かめるまでも無く分かった白石美咲、彼女の声だ。

少年はすぐさま人工知能に指示を出し、美咲の乗る宇宙をモニターに表示させると損傷した宇宙船が不時着しようと星に降りていくのがわかる。

「おい、あの宇宙船を援護しろ!!」

『ソレハデキマセン、ニンムヲスイコウシテクダサイ』

「くそ!!!」

和雅に戦闘中の行動を決める権利は無い。

そんなのは分かりきっていた事なのだが、少年は宇宙船の中で中央に一つだけ物寂しくある腰掛けた座席を片腕で強く叩きつけ、悔しさから顔を歪める。すると次の瞬間、自分の乗る宇宙船が強い衝撃と共に大きく揺れた。

『キタイヲソンショウシマシタ。セイメイカツドウガカノウナホシニフジチャクシマス。』

警報音とこのアナウンスが幾度となく流れる。だが、和雅は寧ろそれに希望を見出した。

このまま行けば、合法的に美咲の後を追う事が出来る。少年は決意を目に宿し、美咲の乗った宇宙船を追いかけるように星へ落ちて行った。

次話

本藤和雅が目を覚ますと、そこは緑が生い茂る森の中のようだった。近くには壊れた宇宙船の破片などが見えている。 彼は美咲を追うと決心した後...
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