小学生編 第16話 見つけた女性

日付が変わって日曜日。

地球にあるショッピングモール二階、一角にあるゲームコーナーにて、生気のない死んだような目の少年、本藤和雅はUFOキャッチャーのアームを一生懸命に眺めていた。

彼が狙う景品は、UFOキャッチャーの箱の中を、殆どそれで占めてしまうほどの巨大な板状のチョコレートで、それに齧り付きたいが為に頑張っているのだが、所持金的にもう後が無いような状況だった。

(くっ、使えるのはあと300円。一回100円だから、残り3回でどこまでいけるか・・・・。)

この巨大なチョコレートの景品を手に入れるには、中央に伸ばされている白い棒に吊るされた、熊のぬいぐるみを落とす事で交換する事が出来る。

落とすと言っても、アームで狙わなければならないのは、棒の先に引っ掛けてあるフックで、それにぬいぐるみが吊るされている。

あと数センチ程度の移動で、フックを白い棒から外す事が出来そうだが、棒の先端には滑り止めの透明なゴムが付いているので、なんとも際どいところだ。

和雅は頭で重ねたシュミレーションを元に気合を入れると、持っている100円玉をUFOキャッチャーに投入する。

残り回数の少ない彼にとって、狙った位置にアームを持って来れないような失敗は許されない。

真剣に2つあるアームを動かす右の矢印がついた一つ目のボタンを押し、狙った場所でピタリと止める。一息付き、そのまま二つ目の上の矢印が書いてあるボタンを、ほぼ動かさないように触れる程度で押し、降りていくアームの先端がフックに当たる。すると、持ち上がった拍子に弾けるようにして熊のぬいぐるみが下に落ちた。

『おめでとう。景品ゲットだよ。』

その音声と軽快な音楽が流れると同時に、無言のガッツポーズをする和雅の様子を、途中から見ていた少女が彼に声を掛ける。

「おにぃ、何とったの?」

黒髪を低めの二つ結びにし、中央にリボンが付いている濃い青のワンピースを着ている少女の名は本藤みどり。和雅の妹である。

「おぉ、みどり。見ろよこのデカイチョコレートを!これをゲットしたのさ!」

「おお!すげー!」

「ふふん。ところで欲しい物は買えたのか?」

「うん!」

そう言って低め二つ結びの少女。みどりは両手に持つ、4つの紙袋を笑顔で和雅に見せ付ける。

「よかったな。」

「もうやる事ないし、帰ろ?」

「そうだな。半分荷物持つよ。」

「ありがと!」

和雅はみどりから紙袋を2つ受け取り、帰路につく。

他愛も無い話をしながら、二人の兄妹が並んで帰っている時、ふと目の前にいる長く美しい黒髪の女性に和雅少年は目を奪われた。

髪の綺麗なその女性が、兄妹がすれ違う瞬間に振り返り、顔を見た少年が想像した通りの美人だった事に和雅が思わず二度見すると、そこにはもう彼女の姿が無かった。

兄和雅の様子に疑問を覚えた妹みどりは、首を傾げながら問う。

「どうしたの?おにぃ?」

「いや、さっき凄く綺麗な人がいた。」

「え?どこ?」

「もういない。」

「なーんだ。」

「ごめん。いこっか。」

「うん。」

和雅は歩きながら考える。

あの女性が美人だったから振り返った、それは間違えない。だが、目を離して再び彼女に視線を送るまでの時間は、そこ数秒と言う短い時間で、移動したにしては早すぎるし、彼女はどこに行ってしまったのだろうか。

それにすれ違いざまに合った彼女の目は、何故か凄く冷たく。恐ろしかった。

次話

翌朝。本藤和雅は学校に向かう為の身支度を整えていた。 道具の詰め終わった、もうすっかり潰れてしまっているボロボロのランドセルを見る少年...
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