小学生編 第7話 酷な世界

和雅は目を覚ますと、悪夢にうなされていたかの様に飛び起きた。最悪の寝起きで、寝汗がビッショリとTシャツを湿らせていた。

息切れする呼吸を整え、冷静になって周りを確認すると、自分の部屋のベットの上で横になって居たようだ。

和雅は冷静になって昨晩の訓練を思い出す。寝ぼけているせいか夢だと思いたい自分が何処かにいるが、夢だと思えないくらい頭に記憶が焼き付いている。

あのほぼ拷問のような仕打ち、思い出しただけでも恐怖と怒りが感情を支配しそうだったが、そんな事よりも和雅には重要事項があった。

それは拳銃で打ち抜かれた坊主頭の少年。坂井準さかいじゅんの安否だ。

「準ちゃんは、どうなったんだ!!」

そんな風に声を漏らしながら一人焦っていると、部屋の扉か開き妹が顔を出した。

「おにぃ、坂井くんが迎えにきてるよ?」

「準ちゃんが!!」

その言葉を聞き、和雅はすぐさまベットから飛び出す。二階にある部屋から玄関へ階段を駆け下り、そこで待っている坊主頭の少年の姿を確認すると、肩を掴んで必死になって問いかけた。

「準ちゃん!?大丈夫なのか!?」

「いっ痛いよ。かず。」

「ごめん。」

冷静さを取り戻した和雅を見て、準は少し嬉しそうな顔をすると、元気よく肩を叩き返してこう言った。

「僕は大丈夫だよ!学校いこう!」

驚いた事に準は殆ど無傷だった。

その後は早く準備をしろと催促され、学校へ向うための準備を手早く済ませて家を出た。通学路を歩きながら、和雅は準に疑問を問いかける。

「準ちゃん。結局、あの後どうなったんだ?」

「僕も気を失ってなっていたから目を覚ましてからの話になるんだけど、気付いたら和雅と一緒に医療室で寝ていたんだ。」

「医療室?」

「うん。大心くんから聞いた話だと、かずは腕が折れていて重症だったみたいだよ。」

「あぁ、そう言えば・・・。」

和雅は気を失う前のことを思い出す。あの時、自分の攻撃は当たる事無く、跳ね返されたかのように腕が逆方向に折れていた。

確かそのまま気を失ったのだが、少年の折れた筈の右腕は特に何の異常の無い、正常な状態だった。

「情報局は凄いよね。拳銃で打ち抜かれても腕が折れても、すぐに直しちゃうんだから。」

「・・・あぁ。」

「かず。昨日は大変だったね?流石に参っちゃった?」

「大変ってレベルじゃなかったぞ、あれ。殺しに来てたよ。」

「真さんは厳しい人だけど、あそこまで激しい姿は僕も始めて見たよ。でも、超能力は自分で“発動できる”ようになったんじゃない?」

和雅は準の言っている事を、実は目を覚ましたときから感覚的に感じて居た。

自分で超能力を使う事のできる確かな感覚。和雅は目を瞑り、それを再確認した。不思議と頭の中にリモコンボタンのようなイメージが浮ぶ。

その中には、再生、早送り、巻き戻し、スロー、一時停止を彷彿とさせる三角と四角で描かれるマークがあり、和雅はその中のスローのボタンを押すイメージをする。

そして目を開けると、世界の時間がまるで止まっているかのように遅くなっていた。

「・・・・・・。」

和雅は無言のまま、その時間の進みが遅い世界で、自分のランドセルの中から体育の授業で使う体操服の赤白帽子を取り出し、静止しているような状態の準の坊主頭に被せると、もう一度目を瞑り、イメージの中の再生のボタンを押すと世界の時間が元に戻った。

目を開けて世界の状態を確認した和雅は、準に対してにやけた表情をして言う。

「そう見たいだな。」

和雅の言葉を聞いた後、準は妙に頭に違和感を覚え、いつの間にか被らされている赤白帽子に気付く。

「ああ!いつの間に!!」

「な?」

「な?じゃないよ、もうイタズラして!はい帽子。」

準はそう言い和雅に帽子を返した後。彼は少し腕を組んで考え込んだ。

「うーん。」

「どうしたの、準ちゃん?」

「かず、これもう発動ってレベルじゃないよ。」

「え?」

「これはもう、能力を使いこなしているよ。」

「そうなの?」

「絶対そうだよ!僕なんか始めは発動するだけで精一杯で、能力を発動した途端、すぐ僕の意思とは関係なく力は消えていたから。」

それを聞いて和雅はふと疑問を覚える。

「そう言えば準ちゃんの能力ってなんなの?」

「僕は特殊で『武装型』なんだ。」

「武装型?」

「うん。」

そう言うと準は真横に手をかざす。すると、彼の手の先から徐々に何かが出現していき、それは少しずつ実態になっていくと日本刀のような形を取る。

完全に日本刀として出現したそれを、坊主頭の坂井準は軽く空を切りながら肩に担ぐと、和雅に見せ付ける様にして言う。

「僕の武装は『空気を操る能力』さ!」

「かっ、かっけーーー!!!!!!」

「ふふん♪でしょ。」

「な、な、な、なんだよ武装型って!!俺もそれがいい!!!」

「残念!かずは『超能力型』だから無理だよ!」

「ええええ!?ていうか武装型と超能力型ってなんだよ。聞いてないぞ?」

「そうだね。簡単に言うと超能力型は能力者自身が能力を使うのに対して、武装型は能力者が作り出した武器に力が宿るんだ。」

「へぇー。」

「あと武装型は希少らしくて、超能力者の中でも千人に一人居れば良い方らしいんだよね。」

「そうなのか。武装型格好良いな。」

「ふふん♪」

「でも、こんなところで出して良かったのか?」

「え?」

「通行人、すごい見てるぞ?」

「やば!!」

指摘を受けた準は、慌てて能力で作り出した日本刀のような武器を消して見せた。普通に通学路で話していた二人の周りには、大人数人が立ち止まってこちらを見ている。

「あっ、消したりできるんだ。便利だね。」

「まぁね!あっ、かず?ちょっと鼻をつまんで!」

「え?・・・うん。」

和雅がおとなしく鼻をつまんだ事を確認すると、準はポケットから白いビー玉サイズの塊を取り出し、地面に向けて思い切り投げつけた。

「うお!」

「かず!こっち!」

地面に叩きつけられたその塊は、破裂すると白い煙幕となって回りに広がる。 準は和雅の手を引っ張り、煙幕から抜けるように学校の方へ走る。

ある程度走りきると、二人は息を切らしながら校門を抜けた。

彼らの通っている学校は、校門から校舎までは運動場があり、そこを歩きながら二人は息を整える。和雅は微妙な表情でこう言った。

「準ちゃん・・・なんだあの忍者みたいな目くらまし。」

「かっこいいでしょ!」

「いや、意味無いだろ!」

「実はあるんだなぁ♪」

「え?」

和雅と準はそう話しながら下駄箱まで着くと、靴と上靴を履き替えて話を続ける。

「あの白い煙には記憶を消す作用があるんだ。」

「記憶をけす?」

「そうそう。」

「ふーん。まぁ秘密って言っていたしな。」

「そこで、さっきの煙幕が便利って訳さ!他にも注射器とか、拳銃の形をしたものまでいろいろあるよ。」

「なるほどなぁ。」

「あっ、そう言えば僕、職員室に行かないといけないから、先に教室に行っておいてくれる?」

「あー、わかった。」

「かず。ちゃんと教室まで行くんだよ?」

「わかっているよ。ここまで来て帰らないって。」

「だよね。じゃ!」

「はーい。いってらっしゃい。」

準はそう言って手を振りながら、笑顔で職員室の方まで走っていった。和雅はそんな準に答えるように手を振り返し、とぼとぼと教室のほうへ向う。

彼は階段を上りながら重い足を上げる。しばらく学校には顔を出していなかったので、正直気が重い。

そうやって一歩ずつ階段を上りきり、自分の教室の前まで辿り着くと、賑やかな声が和雅の耳に入る。少年の鼓動は次第に早くなっていき、緊張の面持ちで扉に手をかけ開けようとした途端、クラスメイトのこんな話声が耳に届く。

『そう言えば本藤くんって、ぜんぜん来ないよねー。』

『いいよ。あんな奴来なくて。』

『そう言えばこの前、6年生を殴り倒したって聞いたよ!』

『こわーい!』

『あんまり話さない方がいいよ。どこかで聞かれているかも。』

『それはないよ。どうせ学校には来ないし。』

『それもそうだね。』

和雅の鼓動は、何かが冷めていくように正常に戻った。準と話しをして生気を取り戻していた少年の目は、いつものように色を失う。

彼は扉に掛けかけていた手を下げ、階段のほうに戻ると詰まらなさそうにこう言った。

「よし、サボろう。」

そのまま和雅は、いつも身を隠す校舎裏へと向かったのだった。

次話

その日の夜も、和雅の家には大心龍介が前回と同じように迎えに来た。情報局の訓練場のある星に着き、少年にトラウマを植え付けたその場所に到着すると...
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク