小学生編 第4話 考える大切なもの

瞳に生気のない少年。本藤和雅は自宅の部屋で目を覚ました。ベットから起き上がると、学校に行くための準備を始める。

彼の通う小学校は制服ではなく私服登校なので、着ている七部丈の青いズボンと無地の白いTシャツの上に、鼠色のパーカーを羽織れば着替えは完了だ。

和雅はパーカーを手に取り、昨日の出来事について考えていた。

(こうしていつものように家で朝起きると、昨日あんな事があったとは思えないな。)

和雅は昨日、決心をした後の事を思い出す。しばらくして再び大信龍介が、病室の個室の様な場所に現れた時の事だ。

『やあ和雅君。少しは考えは纏まったかい?』

『まぁな。で、俺は家に帰れるのか?』

『うん、子供組の間はね。』

『子供組?』

『僕達の組織は「大人組」と「子供組」が年齢で分かれているんだ。中学生を卒業と同時に大人組になって、普通の人達とは関われなくなる。』

『普通の人とは関われないって、どういうことだ?』

『「大人組」になると、普通の人にはその存在を隠さないといけなくなる。』

『何故だ?』

『うちの組織は国家も干渉する事ができない大きな組織で、超能力者を保護しているんだけど、超能力者を悪い事に使おうとする人達に渡らない様にする為だよ。』

和雅はそれを聞いて、これから自分が所属する組織が何かとんでもない組織だと言うことに薄々気が付いてきた。

そもそも秘密結社の様なものには、余りいいイメージはない。『超能力』と言う力を身に付けたいとは思うが、このまま悪の道に落ちていくのではないか、そんな不安が和雅を襲う。

『なんで子供組は存在を隠さなくてもいいんだ?』

『君の事は大人が守ってくれるし、それに君が「大人組」に上がる前に、どうするか選択する事も出来るからかな。』

『選択って?』

『このまま組織に就職するか、記憶と超能力を消されるのを代償に、一般人に戻るかの選択だよ。』

『一応、辞めるって選択は後からできるんだな。』

『まぁね。』

和雅はそれを聞いて心底安堵した。しかし、やめると言う選択をした場合、記憶も超能力も消されてしまうのでは、全く意味がない。そこをどうするかは、これからの課題になってくるのだろう。

少年はふと疑問に思った事を龍介に問う。

『というか、ここは何処なんだ?』

『熊本市にある組織の支部だよ。絶対に見つかる事のない場所さ。』

『そう言えば、なんて言う組織なんだ?』

『組織の名は「情報局」超能力者を束ねる情報屋だよ。』

『情報局・・・。』

『今日はもう遅いから家まで送るよ。あと、わかっているとは思うけど、この事は誰にも言ってはいけないよ?まぁ言っても信じてはもらえないと思うけど。』

そうして和雅は家に帰されたのだった。少年は思考を巡らせながらランドセルに、一応学校の授業で使う教科書などを入れる。

(結局聞いていなかったけど、普通の生活しながらどうやって組織に関るんだ?)

そんな疑問を覚えながらも、和雅はとりあえず学校へ行く為に家を出た。

いつものように家族を心配させない為に行くふりをしているだけ、今回は良く行く神社へ向う事にした。人通りが少ないその神社は、サボるには絶好の穴場で賽銭箱の周りは和雅の定位置になっていた。

少年は神社の賽銭箱の前に着くと、いつものように座ろうとしたがある声に呼び止められた。

「ああああ、見つけた!かず、俺が朝から迎えに行くと思って早く家を出たね!」

その元気な声の主は坊主頭の少年。坂井準さかいじゅんだった。和雅は予想外な人物の登場に嫌そうな顔をしてその声に答えた。

「げっ、じゅんちゃん。」

「露骨に嫌そうな顔じゃないか?それと昨日はよくも出し抜いてくれたね!!」

「・・・・・・・・あ。」

「あ。じゃないよ!」

そう言えば昨日、準はわざわざ和雅の家まで迎えに来て、学校に行かせようとしてくれたのだった。大心龍介に襲われて、それどころではなかった和雅はその事をすっかり忘れていた。

「ごめんごめん。昨日はいろいろあってさ、それに今日も別にわざと家を早く出た訳じゃないぞ?たまたま目が覚めたからだよ。」

「ふ~ん。いろいろって何さ?」

「いつものように喧嘩吹っかけられたんだよ。」

「えっ、そうだったの?大丈夫だったの?」

「うん。」

和雅の言い分を聞き、少し申し訳なさそうな顔をした準は、気を取り直して質問を投げる。

「じゃあ、なんで今日は学校行かないのさ?」

「・・・・・・ちょっと考えたい事があってね。」

「また一人で悩んで!たまには頼って貰ってもいいんだけど?」

「大した悩みじゃないよ。それにこれは一人で考えないといけない事なんだ。」

坂井準はその言葉にいつもとは違う感覚を覚えた。和雅は悩み事があると、準の前では心配させないために隠そうとする。

実際それは隠せていない為、準にはいつもバレているのだが、今回は全く隠す様子がなかった。しかも考えたいと本人が言い、さらに彼の顔は何処か暗いイメージではなく、前向きな表情に見えた。

和雅の中で何かが前向きに動いている。ならばここは下手に干渉せず、彼の思うまま考えさせておくのが良いかもしれない。そう思った準は和雅に笑顔で言う。

「・・・そっか。わかった!なら今日のところは見逃してあげよう!だけど、明日からはちゃんと学校に来るんだよ!」

「うん、ありがとう。」

和雅がそう答えると、準は手を振りながら元気よく走って学校の方へ向かった。

いつも自分の事を考え気にかけてくれる。そんな親友を尊く思いながら、和雅は手を振り返していた。

そしてまた強く思い直す。絶対に何があっても親友、家族、自分が大切だと思うもの全てを守ると。その為にはどんな事でも乗り越えると。

「なんだか眠くなってきたな。」

そう言うと和雅は重い瞼を擦り、そのまま神社の賽銭箱の前で横になり眠ってしまった。

次話

少年が目を覚ますと辺りは夕方になっていた。夕焼けに染まる空と、カラスの鳴き声が彼の耳に優しく響き、まだ重たい目をこすりながら、和雅は呟く。 ...
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