小学生編 第18話 恥ずかしい失態

この日の夜も白石美咲。上級情報員率いる作戦チームは、情報局から言い渡された仕事をこなしていた。

不慣れだった本藤和雅、坂井準の二人の少年も、経験を重ねて今では作戦中、単独での行動もこなせるまでに成長した。

現在チームに与えられている仕事は、日本の宇宙研究機関にあるデータの入手と消去。入手するデータは機関にあるデータすべて、抹消するのは情報局という組織があると言う事の暗示になりそうな情報だ。

今回はデータのコピー・消去をする班と、消去するデータの入ったハードディスクそのものを物理的に破壊する班に分かれて行動する。

本藤和雅は今回の作戦で、単独でのハードディスク破壊を任命されている。

彼はスーパーコンピューターが列をなして、ずらりと並ぶ薄暗い部屋で身を潜め、耳に装着している無線機の調子を確かめながらコピー・消去班からの連絡を待っている。

「さっむ。」

そう呟いた和雅の口元からは、白い息が漏れた。

発熱性のあるコンピューターを冷ますために、エアコンを激しく効くこの部屋は、室温が氷点下に達している。

事前にコートを羽織り、対策しているもののズボンは短パンのままだし、大人しく待つには身体に応える温度だ。

和雅少年は待つだけの退屈な仕事に、飽き飽きした表情を浮かべると、コンピューターを背もたれにして床に座り込んだ。

「暇だわ。」

「誰かいるのか!!」

何気なく和雅がそう小声で呟いた時、大人の若い男性の声が反応した。

(やっべ、見回りがいたのか!)

仕事中に見回りに見つかるなど、致命的な失敗だ。

懐中電灯か何かを持っているのだろう。明らかに少年が座り込んで背もたれにしているコンピューターの裏側が光で照らされているのが分かる。

和雅は焦り、この状況を打開する策を必死で思考した。

(まずいまずい!どうする!!)

そうこうしている内にも男が少しずつこちらに向かってきている。

足音につられ、少年の心拍数が上がっていく。どうすればいい?しかし、和雅の脳内は完全に混乱状態に陥り、気はつけば見回りに来た警備員の男に見つかってしまっていた。懐中電灯の光が少年を眩しく照らす。

警備員の男は和雅を見ると「子供?」と呟き、何かを考える素振りを見せた後、優しく声を掛けて来た。

「ぼうや?ここで何をしているんだい?」

和雅は彼のこの反応をみて、こちらが何も知らない無垢な子供だと思ってくれている事に静かに安堵した。

「かくれんぼしてるの!」

和雅は咄嗟に何も知らない子供を演じるため、普段の彼では考えられないような無邪気な笑顔と声でそう言葉を返した。

緊急処置とは言え、少年の心の中は今にも燃え滾りそうな羞恥心でいっぱいになる。

「かくれんぼ??こんな所で?」

「うん!」

「どうやってここに入ったんだい?」

「ふつうに入れたよ?」

「そうなの!?これはセキリティーに何か問題が起きたのか?」

そう言って頭を抱える警備員の男。彼は続けてこう質問をする。

「そうかぁ、ぼうやの親御さんは?」

「いないよ?友達と遊んでるもん!」

「そっかそっか。どういう訳かここに紛れ込んでしまったんだね?しかし災難だっだね?ここは外と違って寒いから・・・・・・・・。」

男はそこまで言うと顔色を変える。そして緊張した面持ちになると、低い声色でこう問うた。

「・・・・君、なんでコートを着ているの?」

その瞬間、本藤和雅は超能力を発動した。世界が止まったかのように遅くなる。

冷静に考えてみればここに和雅がいることは不自然でしかない。外は遅く夜中の2時を回り、夏の季節にコートを着た子供が一人、警備の厳重な施設の中に居る。何をおいても疑わしい少年が、そう簡単にこの場を去れる訳が無い。

「しばらく寝ててくれ。」

そう言って生気のない死んだような目の少年、本藤和雅は警備員の男に記憶抹消の効果のある睡眠薬を注射した。すると彼は能力を解除して数分と持たず、警備員の男は倒れて眠りに付いた。

そんな風に一悶着あってすぐ、無線で破壊の指令を受けた少年は、自分の仕事をこなしてその場を後にした。

仕事終了後、チームで前もって決めていた集合地点に一番遅れてきた和雅は、先に着いて待っている坂井準、大心龍介、白石美咲の姿を見つけると声を掛けた。

「みんな、遅れてごめん。」

「「「・・・・・・・・。」」」

和雅の言葉に誰も反応せず俯いている3人を見て、違和感を覚えた和雅は、顔を覗き込むようにしてもう一度問いかける。

「おーーい。」

すると、坊主頭の少年。坂井準が急に噴出してこう言った。

「もう無理!!」

準のその言葉が轟いた途端、少年少女3人がいっせいに笑い出した。

「「「あーーーはっははっはははははははははは!!!」」」

突然の事に驚き困惑する和雅、その表情にまたひと笑い起きてから、少し落ち着いた作戦チームリーダー白石美咲がこう言った。

「ふふっ、ごめんね。かずくん。「かくれんぼ!」のくだり、全部無線で聞こえていたの。」

「え!?・・・・なっ・・・なっ!」

「凄く可愛かったよ?」

美咲がそう言って、またひとしきり笑われた。

この時の事は和雅にとって一生記憶に残る、恥ずかしい思い出となるのだった。

次話

熊本上空。情報局地球支部の宇宙船へと帰還した和雅は、逃げるように研究室へと直行した。扉をしめ、一人である事を確認すると、笑われた事を思い出し...
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