小学生編 第19話 初めての気持ち

熊本上空。情報局地球支部の宇宙船へと帰還した和雅は、逃げるように研究室へと直行した。扉をしめ、一人である事を確認すると、笑われた事を思い出し、赤面する顔を手で顔を覆って深くため息をついた。

このまま恥ずかしがっていても仕方が無いと心の中で気持ちを整えると、途中で放置していた作業台の前に座り、置いてある黒い箱のような装置に人差し指を触れ、ピピっと電源の入ったような音が聞こえると、光だけで実態のないモニターとキーボードが出現した。

和雅はキーボード操作し、画面に表示される懐中時計のような設計図を見ながら、ふと過去の出来事を思い出したのか、また赤面してため息をつく。

そんな風に頭を抱えて画面を見ていると、突然研究室のドアが開く。

「やっほー!!可愛いかずくんは元気かなーー?」

「やめろぉ!!」

元気に入ってきたのは、茶髪が肩の長さまで伸びていて、可愛い動物の絵の入ったTシャツにミニスカート。ニーソックスに、よく手入れのされているローファーを履いた少女。白石美咲だ。

軽くからかうつもりが、予想以上に面白い反応をした和雅を見て、美咲は不敵に企むように笑うと追い討ちをかけるように言う。

「ふーん。どうしたのかずくぅん?恥ずかしそうねぇ。」

「マジやめて。」

「いやぁ、でも凄く名演技だったよぉ??私もつい違う人なんじゃ無いかって」

「あぁ!もういいだろう?やめろって!」

「あっ、拗ねた。」

「ふん。美咲さんとはもう口聞いてやんないから。」

「ごめんごめん!あら?また“能力武装”の試作品作ってるの?」

「・・・・・・・。」

美咲の問いかけに、和雅少年はそっぽを向いて答えようとしない。そんな様子に少女はワザとらしく驚いて見せると、企むような笑みで研究室の端にある棚をあさる。

何をしているのかと、横目でチラチラと美咲の行動を窺う和雅少年。すると彼女はあるものを取り出した。

白く細長い箱に見覚えのある文字、中央に細い棒状のスナック菓子をチョコレートで覆ったお菓子が描かれているそれは『ポッチー』であることは間違えない。

和雅は一瞬戸惑い、お菓子の誘惑に負けないための決意を心で強く持つと、もう一度そっぽを向いた。

「これ上げるから許して?ね?」

『ポッチー』の箱を見せつけ、甘い言葉で許しをこう美咲。しかし和雅はピクリとも動かない。

「えー?いいのかなぁ?かずくん「ポッチー」好きだったよねぇ?あれぇ?いらないのぉ?」

袋から出して、あえて少年の耳元でお菓子の折れる音、咀嚼する音を聞かせながら美咲は言う。

流石の和雅もこれには動揺を隠せず、身体が震え出す。

「はいあーん。」

そう言って少女は最後に袋から一本取り出すと、これ見よがしに彼の口元に突きつけ、ついに耐えられなくなった和雅は無言で「ポッチー」にかぶりついてしまった。

「はい、これで言いっこなしね?」

笑顔で美咲はそう言ったが、正直納得の行かないような気分の和雅だが、口に餌付けとばかりにお菓子を放り込まれ、仕方なく機嫌を直した。

「それで?能力武装の進捗は?」

その美咲の問いに、和雅はお菓子をしばらく咀嚼し、飲み込んでから答える。

「もう大体形にはなって来たよ。後は組み立てて稼働実験して見ないとどうにも。」

「ふーん。完成するといいね♪私も自分の研究しーよお!」

「そう言えば美咲さんって、なんの研究してるの?」

「うん?私は薬とか毒とか、薬学の分野かな。結構好きなの。」

「え?こわ。」

「ひどい!」

「怖いよ。なんでそんなの研究しているのさ・・・。」

「私の能力ってさ『細胞を操る』能力じゃない?」

「え?そうなの?初耳。」

「あれ?教えてなかったっけ?」

「うん。」

「それで私の能力には、薬学の分野が相性がいいの。だからよ?」

「なるほど。」

和雅は口では納得を見せたものの、美咲の『細胞を操る』能力が薬学と相性がいいという主張にはどことなく引っかかるところがあった。

確かに一見、細胞と薬と言うのは相性が良く見え、それの見知を深めることは超能力の向上に役立つことのように思えるが、どうもそれだけではないような気がしてならない。

(変な薬の実験台にされなければいいけど・・・。)

少年はそんな一抹の不安を抱えながらも、画面に表示されている懐中時計を模した設計図を見直し、手元にある作りかけの時計を触り始める。

ある程度作り上げていたため組み立ては簡単に終わり、和雅は懐中時計の形になったその機器の数字12の上にある突起状の部分を押し込み電源を入れる。

この機械のエネルギーの源は人間の生命エネルギーになるので、手放すと動作が止まる。

和雅は一度手放し、動作が止まる事も確認してから再び手に持つと、目を瞑り力を込める。

(要領は簡単だ。いつも超能力を使っている時のイメージで、この“能力武装”を起動する。)

和雅が『能力武装』と銘打つ機器の稼動実験を始めたのを、白石美咲も自分の作業を止めて固唾を呑んで見守る。すると手に持つ時計の1から12の文字が光だし動作音がなる。

成功だと思い和雅が目を開けたが、その瞬間、異様に熱を持ち出した懐中時計に驚いた少年は反射的に手放すと、機器が突然爆発した。

「のわっ!!」

ボン!と言う大きな音と共に、強めの爆風によって周辺のものは大きく散らばり、資料は舞い、機材は机から落ちた。

煽られた本藤和雅は、すぐ後ろにあった壁に激突し、美咲も驚き咄嗟に顔を覆った。

壁に背を打ち付けた和雅は、衝撃で無理やり押し出された肺の空気と「ぐほぉ!」と言う声を上げ、地面に手を付くと背中を抑えて痛みに悶えた。しばらく呆けていた美咲も、我を取り戻すと一言声を上げる。

「あらぁ。」

「うぉおおおお。いってぇぇぇ。」

「大丈夫?かずくん?」

「なっ、なんとか。」

「仕方ないわよ。私達は最近研究を始めたばかりの新米よ?まだ宇宙中で誰も実現してない「自分と全く同じ力を宿した機械をつくる」なんてそう簡単にはいかないわ。」

美咲はそんな事を和雅に言いながら、酷な現実を直球に言い過ぎたかなと心配した。

俯いた少年は沈黙し、少女はさらに心配を大きくしたが、彼は顔を上げると満面の笑みでこう言った。

「へへっ。でも超楽しい。」

「・・・・・・。」

茶髪ショートカットの少女。白石美咲は和雅のその言葉と、無邪気な笑みに胸が高鳴るのを感じた。

自らの胸に手を当て、少し頬を赤らめる少女。

彼女は生涯で感じた事のない感情と、謂れの無い悔しさを覚え、唇を強く噤んだ。

次話

本藤和雅が『能力武装』と命名した、自分とまったく同じ超能力を宿した機器の開発に従事してから半年が過ぎた。 今だ失敗を繰り返し続け、うま...
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