小学生編 第25話 間の運命が動き出す

日曜日。この日も和雅は妹みどりと共に買い物に来ていた。ショッピングモールに入れば、いつも通りゲームセンターに行き、楽しむことを忘れない。

UFOキャッチャーの並ぶ、コーナーで取れる景品を眺めながら、和雅は前回ここに来て出会った、美しい黒髪の女性の事を思い出す。

あの女性はなんだったのか?また出会えるだろうか?そんな思いが、少年の頭を錯綜する。

そしてふと自分のズボンの中に入れていた懐中時計が手に触れる。

取り出してその懐中時計、名称能力武装『時間』を手元で見ながら、笑みがこぼれる。

前回の訓練でよくわかった。

この能力武装は使用していればかなりエネルギー消費を効率化してくれる。訓練とは言え、あの大心龍介を降参まで追い詰めたことは、坂井準との二人かがりでも初めての経験だったし、最終的にあのサバイバル方式訓練では自分が勝者だった。

勝利の後もエネルギーには、まだまだ余裕があったし、これがあればもしかしたら局務長にだって一矢報いる事が出来るかもしれない。

未来に希望が出てきた少年は、笑みを更に深くした。

そんな風にして立ち止まっていると、横から妹の声が話しかけてきた。

「おにぃ、なにニヤニヤしているの?」

「え?あっ、いや、なんでもないよ。」

「なにその時計!とったの?」

「まぁあ、そんなとこだ。」

「へぇ、よかったね!それよりおにぃ。今日このモールの屋上でヒーローショーがあるみたいだよ?」

「お?まじか!」

「おにぃも好きだったよね?見に行こうよ!」

「だな!あ・・・でもその前にトイレに行っておきたいから、先に行っててよ。」

「りょうかーい。」

そうやって兄妹は一時別れた。

別れて再び、ニマニマと笑みを浮かべる和雅少年。その笑みはトイレに向かっている時も続き、出ても続き、屋上に向かっている時も続いた。

(もしかしたら、俺って天才なんじゃね?なんでも出来てしまうのでは!?)

そんな思いまで抱き始める程、少年は喜び続けていた。

屋上に到着すると、少し奥の方にヒーローショー用のステージがあるのが見えた。すると和雅は右奥に立っている黒髪の美女に目が行った。

フェンスの近くで町の景色を眺めている彼女は、前に訪れた時に出会った女性で間違いない。

(この辺に住んでいる人なのかな?)

再び見るその黒髪の女性は、やっぱり美しかった。

和雅は少しの間、その美女に見惚れていると、彼女が近くで同じく外を眺めていた少女に、話し掛けているのを目撃して驚いた。

その少女は、紛れもなく妹のみどりだった。何か楽しそうに話をしている。

自分もその女性とお話できるかも知れない。下心が二人の元に、少年の足を動かした。

能力武装も完成し、女性にも会え、和雅の心は完全に有頂天となっていた。しかし、そんな少年の浮かれた気分も、次の瞬間どん底へと突き落とされる。

唐突な出来事だった。

急に黒髪の女性が、みどりを持ち上げたかと思うと、フェンスから上に投げ込み、屋上から落としたのだ。

和雅は一瞬、何が起きたのか分からなかった。だか、彼が動きを止める事は無かった。

妹が投げ込まれたと同時に体が勝手に走り、自分もフェンスを乗り越えて、みどりの後を追ったのだ。

屋上から落ちていきながら、すれ違い様に見た黒髪の女性の顔を思い出す。

不敵な笑みだった。狂気とも思える笑み。

和雅は先に落ちる妹に、必死になって手を伸ばしながら叫ぶ。

「みどりーーー!!!!!!」

そして超能力を発動する。

世界が止まったかのように遅くなる。

僅か短い時間の中、少年の思考は途轍もなく早く回っていた。

(くそっ!なんなんだあの女は!!でも大丈夫だ。俺には超能力がある。このまま俺が下敷きになって、みどりだけは絶対に死なせない!!!!)

そう思った時だった。和雅の超能力が強制的に解除された。

元に戻った世界に少年は驚きながら、超能力を妨害した人間が誰なのか、感覚的に分かった。

地上にいる白く髪の長い男。アイツだ。

彼は何故か焦ったような表情をしていた。しかし少年は希望を失わない。

自分のポケットの中には能力武装『時間』がある。これを使えば、再び問題なく能力を発動する事が可能だ。

和雅は機器を取り出した。だがその瞬間、能力武装は彼の手の中で消えるように無くなった。

本藤和雅はこんな状況だからだろうか?機器を消滅させたのが、誰の手によってか何故かわかった。

あの女だ。

妹を屋上から投げ落とした。あの女だ。

少年は、屋上で不敵に笑い続けるその女性を睨みつけた。

そして地上ではグシャッと、何かが潰れる音がこだました。

次話

暗い、ただ暗い世界で一人の少年、本藤和雅が立ち尽くしていた。朦朧とする意識の中、自分の頭に直接入ってくるような声が、彼の意識をはっきりとさせ...
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