小学生編 第9話 新しい興味

死んだ目の少年。本藤和雅は家の近くにある神社の賽銭箱の前で、難しい表情を浮かべて本を読んでいた。

「うーん、どう言う意味だ??」

唸りながらの内容を理解しようと読んでいる本のタイトルは「誰でもわかる超能力科学」と書いてあった。難しい漢字や国語が苦手な和雅は、左側に漢字辞書と国語辞典を置き、読めない漢字や理解のできない単語があればいちいちそれで調べていた。

現在の時刻は夕方で、学校は終わり生徒が下校する時間、彼は今日も学校に行っていない。

「やっと見つけた!」

そう怒った口調で和雅に声をかけてきたのは坊主頭の少年、坂井準だ。

実を言うと彼は、毎日のように朝から家まで和雅を迎えに行っていたのだが、ここ最近はいつも逃げられている。本気で逃げる時の和雅少年の隠れる能力はとても高く、準はいつも登校時間までに探しきれないでいた。

そんな準の姿を見て、和雅は本に顔を隠しながら嫌そうに言った。

「ちっ、見つかったか。」

「見つかったか・・・・じゃないよ!!まったくもう!」

「良いじゃん別に、学校つまんないし。」

「あのね、日本は中学生までは義務教育なの。」

「面倒くさい義務だよ。」

「で、和雅はわざわざ僕から逃出して、何しているのさ。」

「・・・・・・勉強。」

「学校でしなさい!!」

「違うんだって、俺がしたいのは学校の勉強じゃないの。」

それを受けて坂井準は、和雅の手に持っている本を見る。「誰でもわかる超能力科学」と書いてある難しそうな本を、辞書などを駆使して理解しようとしている姿が窺える。

「ふーん、科学に興味があるの?」

「まぁね。」

「勉強するのはいいことだけどさ、学校の基礎的な勉強も必要だよ?科学に興味があるなら、学校にだって理科があるじゃないか。」

「学校で習うような理科の範囲は大方理解した。」

「・・・・・・・・。」

その言葉に驚愕した準は思う。和雅はやる気さえ出せば意外と何でも出来てしまうのに、学校に行く事や他の事も含め、きちんとやらないのは少しもったいないと思う。でも同時にきっと彼は自分の好きな事以外は割とどうでも良く、まったく興味が無いのだろう。

(しかし和雅が科学か、しかも『超能力科学』なんて難しい分野を・・・・・・ん?超能力?)

準はおそるおそる和雅が読んでいる本の裏表紙を見ると、そこには貸し出し本のマークと『情報局』のロゴが描かれていた。

「ってかず!!これ情報局の図書館の本じゃん!!こっちに持ってきちゃダメだよ!!」

「うっせーな。いいんだよバレなきゃ。」

「またそんな事いって!真さんに言いつけるよ!」

「・・・・・・・それだけはホント勘弁してください。準様。」

そう言いながら急に態度を変え、土下座を始めた和雅。やはり彼も大心真は怖いようだ。

「じゃ、今度から持ってこないでね?」

「はい。」

「よろしい。それで何で急に科学なんか勉強し始めたの?」

「単純に興味があるのと、一番の狙いは超能力の補填なんだよね。」

「補填?」

「そうそう。俺、訓練中よく倒れていただろ?」

坊主頭の準は、訓練の最中の事を思い出す。これまで大心真から受けてきた超能力の訓練は、大体訓練を受けてる少年3人が意識を失うまで続く。

大心龍介と坂井準は、真の手によってノックダウンされ訓練を終えるのだが、和雅はいつも一番初めに自ら倒れていた。

「確かにかずは、いつも先に倒れるよね?まぁ僕たちも倒れるんだけど。」

「え?まじで?」

「まじだよ。あの訓練は真さんに気絶させられて終わりだから。」

「そうなのか・・・・じゃあ俺は自分で倒れているから、逆によかったのかな?」

「それで結局、かずが倒れる原因はなんなのさ?」

「あーそうだったね。簡単に言うとあれ、俺の超能力の消費エネルギーが大きすぎて、エネルギー切れを起こしているらしいんだ。」

「確か和雅の超能力は『時間を操る』能力だったね?やっぱり、それだけ強力な能力だとそう言う弱点も出てくるよね。」

「師匠に言われたよ、宝の持ち腐れだってね。」

「ははっ、真さん相変わらず言い方きついね。」

「それで悔しいから、もう少し効率的に超能力を使えないか勉強しているって訳。」

「なるほど。それで『超能力科学』なんだね?」

すると和雅は何かを思い出したように持っている本を閉じ、立ち上がって少しの間、夕日の輝く空をボーっと見ると唐突に言った。

「そう言えば今日から俺達、情報局の下級情報員になるんだっけ?」

下級情報員とは、情報局の序列で一番下の位。

訓練を受け、超能力者としてある程度能力を使いこなせるようになったものは情報局に所属している限り、組織の為に仕事をする義務がある。もちろんそれは小学生の和雅達も例外ではない。ちなみに情報局の長である大心真は局務長と言う位だ。

「うん。一人の上級情報員の下でこれから仕事をこなしていくんだよね。」

「誰なんだろうな?俺たちの上司。」

「さぁあ。誰だろうね?出来れば優しい人がいいね。」

「そうだなぁ。」

二人の会話は小学生ながら、疲れきったサラリーマンのような会話にも聞こえた。

それだけここ半年間、毎日受けていた訓練は和雅、準にとっては壮絶なものであり、精神的にも身体的にも疲労したのだろう。

「「はぁー。」」

同時にため息をした二人は顔を見合わせると大きく笑った。少年達はお腹が痛くなるまで笑うと、楽しげに会話をしながら神社を後にした。

次話

本藤和雅、坂井準、大心龍介の少年達は半年間、毎日死ぬ思いをしてきた訓練場で、師である大心真の到着を待っていた。 嫌な時間や苦痛な時間と...
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